学生という身分は、中々忙しいものだとリボーンは感じていた。
勉強を強制され、集団行動を強いられ、宿題を課せられ、
何より時間に縛られる。
今は家庭教師ではあるが、本職が殺し屋。自分の意思に従って生きることを知っているリボーンにとって、それは窮屈以外の何物でもないだろう。
今教室では授業中。
リボーンにとっては休息の時間。
ツナを監視するために作った消火栓のドアの中、悠々とコーヒーをすする。
そして、目の前で土下座したままもう数分間微動だにしないでいるその少年に、冷たく言った。
「邪魔だ。教室に帰れ獄寺」
「リボーンさん、・・・・・ッッどうしても相談したいことがあるんです!!!」



作戦始動!




きーーーーんこーーーんかーーーんこーーーん・・・・・
昼休みを告げる鐘が鳴る。
しかしそんな音も聞こえていないかのように、深刻たる表情で、獄寺は続けた。
それを聞くのは、彼を追い返すことを諦めたリボーンだ。
「おこがましいというのは分かっています。おおそれた望みだということも、承知しています・・・!それでも、俺は・・・・十代目と・・・・・・!!」
「ツナと、何だ?」
「ッじゅ、十代目と・・・・!!!!」
促すリボーン。獄寺の方は真っ赤な顔をして言葉を詰まらせている。口にするのも恥ずかしい願望とは、一体どんなものなのか。
リボーンはさらに聞いた。
「だから、何だ。ツナと何を・・・」
「違います!!!そんな破廉恥な!!!!」
何やら力一杯否定する獄寺に、よく分からんがどっちが破廉恥なんだ、とリボーンがつぶやく。
意を決したように、獄寺が口を開いた。
「リボーンさん、俺、実は・・・・・・・・・・」




「なるほど、な」
見上げて、いつもの固定化された笑い顔のまま、さらにリボーンが続ける。
「ぴったりの教え役を連れてきてやるから、そいつにアドバイスしてもらえ。俺は忙しいんだ」
「本当ですか!?」
さっきまで休憩を満喫していたことにはツッコミも入れず、獄寺がぱぁっと顔を明るくする。
「ああ。ちょっと廊下で待ってろ」
言って、二人は消火栓を出る。ニカッと笑ってどこかに去ってゆくリボーンの後姿を、獄寺は眺めていた。
願望の成就を願う気持ちと、これから始まる指導への期待をこめて。



五分後。




「よッ!」
目の前には山本のさわやかな笑顔。
獄寺は複雑な心境で、ちゃっかり山本の肩の上でくつろいでいるリボーンに聞いた。
「・・・・・・・・・・・・・こいつが、『ぴったりの教え役』・・・・ですか?」
「そうだ」
刻々と増える獄寺の眉間の皺に気付いているのかいないのか、あっさり答えて、肩から降りる。
「獄寺、何かツナといろいろエロエロしたいんだって?」
「リボーンさん!こんなまじりっけなしのエロさ天然セクハラ男に教わることなんてありません!!!」
発言の内容はともかくなおもさわやかMAXな山本に、獄寺は思いっきり拒絶反応を表す。
「そうでもないぞ、獄寺。山本は既にお前より7ステップほど上をいってる」
「な・・・・7ステップも!!?」
「えーと、盛り上がってるとこ悪いんだが、獄寺、ツナに何したいんだよ?結局」
至極当たり前の山本の質問であったが、獄寺の反応は先程と変わらない。
ただ真っ赤になり、ただ言葉に詰まる。
山本に打ち明けること自体、獄寺本人にとっては不可能な事だった。
「い・・・・・・言えるか・・・・」
「ツナと手を繋ぎたいんだろ」
「あー、なるほど」
「リボーンさんーーー!!??」



なぜ、手を繋ぎたいと思ったのか、獄寺自信もよく分からない。
ただ、唐突に自分がほとんど、崇拝する十代目の体に触れていないことに気付き、
急激に、その体に触れたいと思い始めたのだ。
それが叶わなくとも、せめて手は繋ぎたい。
「もちろんそれは部下として恥ずべきことだしそもそもお守りする使命を担っているだけなのだから触る必要なんか最初からないがていうか十代目は
かわいらしすぎるし腕細いし柔らかそうだしってああああああああああああああ俺は何を考えて!!!?」
「重症だな」
「気持ち、結構分かるけどな」
頭の中をぎゅわんぎゅわんさせている獄寺に、リボーンと山本はしみじみと話す。
一通り苦悩した後、立ち直った獄寺の怒りの矛先は
「そもそも!てめぇが十代目にベタベタベタベタベタベタベタベタ触りまくるから悪いんだ!!!」
山本に向いていた。
「俺?そんなに触ってたか?」
一方、完全無自覚の山本はぽけっと攻撃を回避する。
「男の嫉妬はみっともないぞ、獄寺」
「ですが・・・・」
「山本は既にツナと肩を組んだ。言うなればお前の先輩だな」
「くッ・・・・・・・・・・・・・・・・ご指導賜ります野球野朗・・・・!!」
「何かもう礼儀正しいんだかそうじゃないんだか全然わかんねぇな」
困ったように頬をかいて、暴言吐きつつ礼をする獄寺に、山本がつぶやく。
かくして獄寺は先人山本から「ツナと手を繋ぐための3ステップ」を伝授されることとなった。



「じゃ、獄寺を任せたぞ、山本」
「おう」
廊下のど真ん中(山本が消火栓に入らなかったのだ)、特別教室が開かれた。
やたら真面目な顔で、山本が三本、長い指を突き出す。
「よし、獄寺。俺から3つの策を提案する」
「・・・ああ」
「俺に邪魔されることを前提に実行しろ。いいな」
「教えといて邪魔すんのかよ」
「当たり前だろ。じゃ、まずは基本だな。獄寺、お前の場合とりあえず何も考えないでツナに触ってみろ。肩でもどこでもいいから」
「じゅ・・十代目に気安く触れるか!!!!!」
「いや、お前触りたいんだろ?」
「う・・・・・・・・・・・・・そ、そうだが・・・・・」
「ツナと手を繋いでキスして挙句の果てに色んなことしたいって言ってたのはどこの誰だよ」
「正真正銘てめぇ自信だ!!!」
周囲を通過する一般生徒に思い切りひかれてるが、そんなものお構いなしな二人である。
「で、触り慣れたらこれだ。次の時間美術だろ?その教室移動の時、わざと遅いペースで行くんだ。そして鐘が鳴ったと同時に、手をつかんで、走
る!!これなら自然だ」
「なるほど・・・急ぐように見せかけて、か」
にやりにやりと凶悪な笑みを浮かべる二人。後ろでリボーンがどうでもよさそうに鼻ちょうちんなど浮かべている。
「最終ステップ。これはストレートに、作戦なしだ。普通っぽく手ぇ繋ごう、って言ってみろ」
「そ、そんなモンでいいのか?」
「ああ。いいよって言われたらめっけモンだし、嫌がられても強引に行けば何とかなる。ツナは押しに弱いからな・・・」
「なるほど・・・・・・・・・ってオイてめぇやたら沢田さんに詳しくねぇか?」
「あっはっは、気にすんな」
丁寧な説明に疑念を持つ獄寺に、山本は笑ってみせた。
下から、目を覚ましたリボーンが一言言う。
「実証済みだからな」
「果てろおおおおおおおお!!!!!!!」
「うわやっぱりきた!!!じゃな、獄寺!できれば失敗しろよ!!!」
「するか!!!!」
最初から最後までさわやかに余裕を通した山本が、飛ばされた着火前のダイナマイトを避けつつ走り去る。
その背中が見えなくなり、
獄寺はふぅ、と息をついた。
「この作戦は今日実行だな」
そして、リボーンの声にびくりとする。
「リボーンさん・・・・・・・・・・十代目の手を・・・・その、触るのは・・・・・」
「そんなこと俺にはどうでもいい。まぁ、お前の度胸しだいだな。せいぜいがんばれよ」
「・・・・・・・・・・・・・・・・・はい!!!」
今日叶うかもしれない。
憧れの十代目と
ずっと、ずっと前から手を繋ぎたかったのだ。


とにかく本気で、いや、



死ぬ気で十代目と手を繋ぐ!!





そんなことに死ぬ気になるな、とつっこんでくれる人は


残念ながらこの場にいなかった。





つづく。







||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||
いきなり土下座だろこれはぁーーーーーっ!!!

ごめんなさいごめんなさい。くだらないもの書いちゃってごめんなさい。
今迄で最高レベルのアホさ加減。
獄がアホです。山がエロです。
セリフだけ書くとリボーンが超男らしいことを発見。
いや、そうじゃなくてもかなり男前ですけど。
ていうか前男らしい獄寺書こうかなって言った手前にこれですから皆さんやってられないでしょうね。すいません。
耐えられる方は続きどうぞ。

 

続き

 

テキスト目次に戻る