作戦1。
「あ、獄寺君!どうしたの?3時間目もお昼も居なかったけど」
「すみません、十代目。ちょっと野暮用がありまして・・・・・」
「ふーん。そっか・・・・」
(今だ、十代目に触れるなら今しかない・・・次の移動は美術、それまでに何とか十代目に触れて・・・・)
「残念だったなぁ」
「え?」
「お昼、山本もいなかったんだ。獄寺君も一緒にご飯食べたかったのに」
「・・・・・・・!!!!!!!!!!!!!!!」
作戦1、十代目がかわいすぎて、失敗。
作戦始動!2
作戦2。
予定通り、獄寺は遅く教室に戻った。次の作戦(1参照)を実行するためである。
予鈴とともに手を握る。
厳密に言うと「手を繋ぐ」行為とは違う気もするが、ツナの手に触れるだけで昇天モノの獄寺にからすればかなりの勇気を有する作戦であった。
「さ、美術室に移動しなきゃ!行こう獄寺君」
「はいv」
と、彼が満面の笑みで教室を出た瞬間
きーーーーんこーーーんかーーーんこーーーん・・・・
「!!」
鐘が鳴った。
作戦2、実行!!!!
(今だ!)
十代目の手を握る!
十代目の手を・・・・・・・・・・・・・・・・・・・!
走り出そうとしたがその場に立ち止まった・・・
否、完全に動きが停止した獄寺にツナが声をかける。
「?・・・どうしたの獄寺君??」
「待ってください十代目!!まだ心の準備が出来てないんです!!!!」
「えええ!!!?」
顔を真っ赤っかに染め上げた獄寺が叫ぶ。当たり前だがツナも叫んだ。
(お、お、落ち着くんだ俺・・・・・・ここで手も握れなければステップ3の手を繋ぐまではシルクロードのごとく程遠い道のりのなんたらかんたら)
もはや頭が沸騰しかけている獄寺。
その目の前でおろおろするツナ。
「どうしよう、獄寺君が何か今にも臨界点越えそう!!?」
もはや美術どころではない。
そんな中、ツナの手が唐突にぎゅっと掴まれる。
「あ、山本」
「何してんだよ?美術室行くぜ」
ぐいっ
「精神集中心頭滅却南無妙法蓮華経てあー何してんだケンコー骨ううううう!!!!?」
「何って、邪魔。なかなかお前が実行しないからじれったくなってよー」
引っ張られて連れて行かれるツナを見て正気を取り戻した獄寺に、山本はあっさり言い放った。
「だからっててめぇの手を繋いでどうする!!!」
「何の話さ二人とも!!?」
「だってお前にこれヤらせるつもりさらさらないし?」
「てめぇがカタカナでやるっていうなああああああああ!!!」
「だから何の話だそれーーーーー!!!!?」
作戦2、山本(エロ魔人)の邪魔が入り、失敗。
作戦3。
授業も終わって帰り道。
それほど多くない人通り。
しかも山本は部活で不在。
ステップ3の手を繋ぐ、を実行に移すには願ってもないシチュエーション。
だが、
獄寺は完全にやる気を失っていた。
「ねぇ獄寺君、郵便局寄って行ってもいいかな?」
「はぁ。わかりました・・・・・・」
「何か母さんがさ、葉書買って来いって。自分で買えばいいのに」
「はぁ。わかりました・・・・・・」
「道路の向かい側だから歩道橋渡らなきゃ」
「はぁ。わかりました・・・・・・」
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・獄寺君?」
「はぁ。わかりました・・・・・・」
「・・・今から500メートルほど腕をクロスさせながら『テクマクマヤコンお姫様になりたい』って叫びつつ全力疾走してくれない?」
「はぁ。わかりました・・・・・・」
「・・・・・・・・だめだこりゃ」
ツナがあきれるのも無理はない。
獄寺は学校を出る前からもずっと上の空である。
(俺は何てダメなんだ・・・・・・一丁前に手も握れない)
(男を見せる所で自分に負けてしまった・・・・)
(こんな調子ではいつになったら十代目をエスコートできる日が来るのか・・・・・・・・)
頭の中はだいたいずっとこんなん。
ツナの後に従って歩道橋を登る間も、いつもの活気がぜんぜん見受けられない。
「もう、獄寺君変だよ?だいぶ前から」
「はぁ。わかりました・・・・・・」
ツナは根気よく、登りきった所でまた言ってみるが、返事は同じである。
いつもの、あの鬱陶しいほどの元気は、あの忠犬さながらの気遣いはどこへ行ってしまったのか。
「獄寺君・・・・・・」
ツナは、急に寂しくなった。
自分によくしてくれなくなった途端に寂しくなるなど、身勝手かもしれないが、
自分にとってそれは案外大きなことだったのだと、思い知らされる。
歩道橋を降りる直前、しゅんとして、問いかけた。
「・・・・・俺のこと嫌いになった?」
「はぁ。わかり・・・・え?」
耳に入ってきたとんでもない一言に、獄寺の思考が急回転する。
「な、何言ってるんですか十代目!!俺はそんな・・・・」
慌てふためく獄寺に、ツナは疑惑の視線を向ける。
「じゃぁ何で何も答えてくれなかったの?」
「それは、十代目と・・・・・」
獄寺にとって今日何度目かの、言葉がのどに引っかかる感覚。
数秒待って、答えが返ってこないことに失望したツナが、再び歩き出そうとする。
瞬間。
「俺と何をおわああああッ!!!!?」
歩道橋の降りの階段を踏み外した。
「十代目!!!!!!」
ガシッ
バランスを崩し道路まで転げ落ちる
その直前、
獄寺はツナの手を掴んでいた。
「わ!?わ!!?」
「くッ」
グンッ!
それでもなお落ちてしまいそうなツナの小さな体を、自分の体に引き寄せる。
引っ張られたツナは浮くような感覚を覚え、
気がつけば、歩道橋の上の獄寺の腕の中に、納まっていた。
「はぁ・・はぁ・・・た・・・・助かった・・・・・・」
今頃になってツナは背筋が薄ら寒くなり、心臓が激しく動く。
「じゅ・・・う・・・だい・・・・・・・・め・・・・・・・・」
一方、獄寺のほうは違った意味で鼓動を早くしていた。
ほぼ自分が抱きしめている十代目の体。
無論繋いだままの手。
いきなりのことで、心の準備が出来ているはずもなく。
ツナに腕の中から上目遣いで見上げられただけで、心臓が吹っ飛ぶ勢いである。
「ありがとう!ごめんね、ホント助かったよ、獄寺君」
「いいいいいいいいいいいえそそそそそそそそそそんな」
ロボットみたいなことになっている獄寺にはかまわず、ツナは身をよじらせた。
「ね、大丈夫だからそろそろ離してくれない?」
「え、はい、あ、その」
「ん?」
手だけは、このまま繋いでていいですか?
ツナの体を離した獄寺は、この一言がどうしても言えず、またも紅潮する。
どんどん赤くなる獄寺を見上げたツナは
(すっごい真っ赤。・・・・・・ポストみたい・・・・・・あ、そうだ!)
「郵便局行かなきゃ!行こ、獄寺君!!」
本人には失礼な連想から、急に用事を思い出し、手を握ったまま歩道橋を下りる。
「十代目!!?」
「あ、ゴメン、手放す?」
「いえ、このままで!!!!!」
「わかった。早く行こう!」
作戦3、色々遠回りしたが・・・・・・・・・・・・・・・・
とりあえず、成功。
「ちゃおっす、獄寺。事はやり終えたか?」
「はぁ・・・・・・・い、一応・・・・・」
「自分からちゃんとやったか?」
「うっ」
「・・・・・・・・・・・・リードされたのか」
「つ、掴んだのは自分からです・・・・・」
言うまでもないことではあるが。
それから獄寺とツナはほとんど、手を繋げていない。
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アホギャグ完結編。いや、完結できているかどうか。
もはや切腹モノでございますな。
ここまで読んでいただいてありがとうございました。
ところどころエロい発言入ってるけどまぁいいかってここで言っちゃってどうする。
今さらですけど獄寺がツナに触ったことないってのはどうなんでしょう。やっぱナシかな。
素敵な小説を書きたいです・・・・・・・・・こんなアホなんじゃなく・・・・・・・
じゃ、やれよって話ですけどね。
とりあえず今日も土下座っ!!
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