マフィアの姫君

 

 

 


夏休みもそろそろ終わる頃であった。
沢田家のインターフォンは今日も変わらず軽快に鳴る。

「十代目ーーお邪魔しまーす!」

言いつつも、獄寺は鍵のかかっていない玄関を勝手に開けて敷居を跨いだ。
入ってーーー、というツナの声が聞こえてこないが、まあおそらく宿題の途中に眠っているのだろう。

「おう獄寺、今日は遅めだな」

山本が居間からからひょっこり顔を出す。

「手土産選んでたら遅れちまってな。どうよ、今日はスモモだぜ」
「いいねーうまそー」

紅色に熟したスモモを得意気に見せた、ツナがいないときは山本への対応が比較的穏やかな獄寺である。
いつしか沢田家はファミリーの集会所のようになっていた。
慣れた手つきで獄寺が台所の棚からボウルを取り出し、ビニール袋に入っていたスモモを5、6個取り出して洗い始める。

「山本、十代目はどうしてる?」
「さあ?見てねーけど」
「ツナはここにはいないぞ」

山本が返すのと共にリボーンの声が聞こえてきた。ああいらしてたんですか、などと言って手の水をきる。

「十代目はどこに居るんですか?」

聞いた獄寺に、リボーンはなんでもないことのように答えた。

「ツナは誘拐されたぞ」

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
一瞬、空気が止まる。

「誘拐っつーか薬かがされてたからほとんど拉致だな」
「・・・マジ?」
「じゅ・・・十代目が・・・・・・・!!!?」

獄寺の取り落としたスモモが、ゴロゴロと床を転がった。





 

 

 










数時間前。

「・・・・・・・・・・・・・ええと・・・・・・」

状況を把握し切れなくて、思わずツナは言葉を漏らした。
少し前、母に頼まれて自分はお使いに行っていたはずであった。
しかし、目の前のあらゆるものがその記憶を捻じ曲げるようにそこに在る。
例えば、ツナがいる部屋は見も知らぬ場所だ。畳が敷き詰められている和室で、ごつい趣味のちゃぶ台がある。掛け軸の文字は「質実剛健」。
広さはざっと12畳くらいだろうか。
しかし何だか人為的につけられた傷がいくつもある。焦げ跡、切り傷、謎の窪みetc・・・よく見れば障子にも隙間が多い。
ともかく知らない部屋であった。
その上。

「何で俺縛られてんの・・・・・・・!?」

上半身に加え、足首もきっちり結ばれている。なかなかの念の入り様である。もちろんツナはこれっぽっちも縛られる心当たりがない。
それにしても縛られるとは穏やかじゃない。
疑問と共にどうしようもない不安と恐怖が襲ってくる。
横に視線を移すと、一人にするなとうるさいのでお使いに連れて行ったランボが、自分と同じ格好で縛られていた。

「ラ、ランボ、コレどういうこと?」
「ランボさん知らないぞ!ツナが急に倒れたんだ!!」
「・・・俺が・・・!?」

何だかわけがわからない。
と、混乱しているツナの目の前にある襖が、すらっと開かれた。
そこに居る人物を見て、今度こそツナはギョッとする。

「おう、目ェ覚ましたかぁお嬢さん」

50かそこらか、中肉中背で白髪交じりのオールバックにアゴヒゲ、サングラスが異様にキマッたスーツの男。
後ろにスキンヘッドと色眼鏡のごつい男が続く。

(こ・・・この人たちヤクザだ!!!ほぼ間違いなく極道の方々だーーーーー!!!)

中央の偉そうなサングラスに見据えられ、ツナは早々に血色を失くした。
「お嬢さん」という呼び方に突っ込みを入れている余裕もない。

「ほーォ、助けの一つも求めねぇたあ、大した度胸じゃねえか。気に入ったぜ」

いやもう声を上げる勇気すらありませんから、とツナが心の中で意味もなく否定する。
どうなってるんだ一体。何で俺が知らない部屋に連れてかれてその道の人に縛られなきゃいけないんだ!?
心も体もめいっぱい冷や汗をかくツナだった。
それとは対照的に、臆する様子もないランボが明るい声を上げる。

「おれっちランボだよ!おじさんはボスの友達??」
「・・・・・・・・・・なっ・・・・!!」

青ざめたツナであったが、サングラスの男は気にした様子もなく返事をする。

「っはっはっはっは、残念だなチビ。俺とアンタのボスはたぶん敵同士だ」
「ちぇー」

残念そうな声を上げるランボ。
それはそうと、男がこちらを見て、サングラスを外した。

「俺ぁ高村組五代目組頭だ・・・・・・・お嬢さん、一つあんたを利用させてもらうぜ」
「り、利用???」

黒色に阻まれていたその目は鋭くツナを見下ろす。
組ってついた!!やっぱりヤーさんだーーー!!!などと内心焦りながら、ツナは何とか返事を搾り出す。
その男・・・高村というらしい・・・はちゃぶ台を挟んでツナの向かい側に胡坐をかいて座った。部下らしき男が上着を受け取る。
高村が口を開いた。

「ちょいと前、暑ぃ日だった・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・高村組は・・・・・・・・・壊滅した」
「いきなり終わっちゃった!!?」

ツナが思わず大声で突っ込んだが、高村は酔いしれるように言葉を続ける。

「高村組っつったらよぉ、80人を背負った地元の出入りじゃ負けなしの大所帯だろが」
「いや・・・知りませんけど」
「それが・・・!!いきなり来た連中が俺の部下を片っ端から再起不能にした挙句よぉ」
「はあ・・・・・・・」
「俺ら高村組がン十年守ってきたシマをごっそり持っていきやがって・・・!」
「そ・・・それはお気の毒に・・・・・・・・・」
「うう・・・すまんのお嬢さん・・・・・・」

だんだん愚痴っぽくなってきている高村組五代目組頭(こんなんでもえらい人なんだろう多分)に、ツナはなるたけ柔らかな言葉で対応する。
高村の話からすると、高村組はよくわからないが強かったらしい。
だが「連中」の攻撃により壊滅の危機に追い込まれた。ていうか壊滅したのだという。
大事なシマ(ナワバリのことだろう)まで奪われて。

(話は何となく分かったけど・・・・・・・・・・・・なんで俺がこんな目に?)

なぜそこで高村組が自分を拉致したのか、それがツナにはわからない。
ツナは縛られて動かない体でちゃぶ台に乗り出すようにして、高村に聞いた。

「あっあの・・・・・・・・・・つかぬ事をお聞きしますが、連中って誰のことですか?」
「あぁ・・・忘れようとも頭から離れてくれちゃいねぇ」

高村が口惜しそうに歯軋りをする。

「憎きボンゴレファミリーよ」

ごっ!!!!
ツナは年季の入ったちゃぶ台に頭をぶつけていた。

(あっ・・・あの銃刀法違反幼児はどこまで俺の人生を危ないことに巻き込めば気がすむっ・・・・・・・!!!)

彼を何度も生命の危機にさらすのにも飽き足らず、
彼の友人をファミリーに入れるにも飽き足らず、
とうとう日本のヤクザにも手を出しやがったリボーン。
焦燥と憎悪が入り混じった大変な顔のツナであった。
ちなみにもう一人の銃刀法違反幼児は、ツナと同様に縛られながらも会話に飽きて寝入っている。

「壊滅してからしばらく、俺たちぁシマを取り返す準備をすぅことにしてなぁ」
「え・・・はい」
「ボンゴレファミリーを部下につけさせたンよ」
「ええ!?」
「そうしたら、お前さんがボンゴレファミリーの連中に大事に大事に守られてンじゃねーか。お姫様みたいによぉ」
「あ・・・・・・・・・」

思い当たる節がありすぎて、思わず固まってしまう。
それが不良少年のことか野球少年のことか定かではなかったが、とりあえず否定は出来ない。
そんな反応を示すツナに、高村はにやりと笑う。

「お嬢さん、あんたはいわば人質っつーやつだ。お嬢さんを俺たちがオサえてりゃぁ、連中は手出しも出来んっちゅうワケでぇ」
「人・・・・質・・・・・・・!?」
「ついでに取られたシマとあんたを交換すりゃ、俺らは安泰でさぁ」
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・!!」

ツナは愕然とした。
悪の組織にさらわれ、悪の組織に盾にされ、悪の組織に利用される。
認めたくはないが、まるっきりお姫様状態ではないか。

「自分がどぉいう立場だか・・・・わかったか?」
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・そんな・・・・・・・」
「よぉし、分かったところで、お姫様の最初の仕事といくかぁ」

意気揚々として高村が指を鳴らす。
後ろに控えていた手下らしき男たちがツナに接近した。一人が押さえに回り、一人が置いてあったカバンからカメラを取り出す。

「わーーーーーーーっ!!?」

悲鳴を上げて体を強張らせたツナであったが、男たちが離してくれるはずもない。
ガラガラガラガラ・・・・・・・・
部屋の外から何かが運ばれてくる音がする。

「なっ・・・何する気だよ!?」

勇気を振り絞って叫ぶと、にやり、高村が卑下た笑みを作った。

「こういう時ぁ人質のヤバイ写真を撮って敵に送り付けンのが定番だ」
「定番で物事を進めるなーーーー!!!」
「クックック・・・・・・・恥ずかしい写真を山ほど撮ってやるぜ」
「何なんだこの人!!!暴力じゃなくて助かったけどこんな陰湿なヤクザ逆に嫌だーーーーー!!!!

ツナが叫んで顔を真っ赤にして身をよじっても、縄は体を締め付けるだけ。
恥ずかしい写真って何だ!?女の子ならともかく俺の恥ずかしい写真って何撮る気なんだ!!?
必死に逃げる方法を考えるが、すべて泡となって消えてゆく。
バッチリ絶体絶命である。

「さあ観念しな、お嬢さん」
「!!!!」

高村の言葉に、ツナははっと気づいた。
そういえば、この男はずっとツナをお嬢さん呼ばわりしていた。

(もしかしたら俺を女だと思ってるのかも・・・・!!)

特に嬉しくもない間違いに、最後の望みを託す。

「ちょ、ちょっと待って!!!俺男だから撮っても面白くともなんともないよ!!?」
「なにィッ!!?」

高村が声を上げ、部下の動きも停止する。
互いに顔を見合わせ、ツナの顔をじっと凝視して、一秒、二秒、
数秒の沈黙・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

「うんまあそれはそれでよし」
「なーーーんーーーーーでぇぇぇぇぇぇぇ!!!!!?」

ツナの魂の叫びが室内に響き渡った。




























「十代目えええーーーーーーーーーーーーーーーーーーー!!!!!」
そんなツナの叫びから数時間後の、現在。
ツナが拉致られたと聞いた瞬間、獄寺は物凄い勢いで玄関を飛び出していってしまった。
山本がぽかんとしていた数秒後、
そのテンションを異様なまでに保ったまま戻ってくる。

「敵の居場所を知りません!!!」
「言ってないからな」

冷静に答えるリボーン。
その間も、獄寺は眉間に皺を寄せ、眉を吊り上げていたが目は泣きそうな・・・とにかく切羽詰っていた。
ツナが誘拐された。
その事実が本当ならば尋常なことじゃない。
彼はボンゴレファミリー十代目・・・・・・今は頼りない少年でも、ボンゴレファミリーの名を背負っている手前、
イタリアンマフィアの抗争に巻き込まれる可能性は十分にある。
また、そうでなくとも、獄寺にとっては自分の命よりも大切な沢田綱吉という存在。
それが見知らぬものの手に渡り、今どんな目にあっているかと思うと・・・・・・・!

「ああ〜〜〜っやめろオオ!!俺の・・・俺の十代目に俺以外の生物が触れるんじゃねぇぇぇぇ!!!!」
「心配しつつもスゲーこと口走ってるって気づいてるかお前」
「今の獄寺には聞こえてないぞ」
「・・・・・・・・だろうな」

尚も表情の変わらないリボーンの一言に、にこりともせず山本が同意する。
形のいい眉がひそめられる。
山本も山本でおとなしくテーブルにつき、表面上冷静を保ってはいた。
だがしかし、もしも今誘拐犯が彼の前に現れたなら、
何のためらいもなく金属バットで一撃を食らわすであろう。
二人を満足げに見やって、リボーンは懐から一通の手紙を取り出した。
その手紙は切手も宛先も書いておらず、手紙というよりは果たし状という物体を連想させるもので、
表面にはただ「ボンゴレファミリーに告ぐ」とだけ書いてあった。しかも毛筆の縦書きだ。

「誘拐犯から手紙が来てるぞ」
「手紙!!?」
「あけてみろよ」

一人ぐるぐるしていた獄寺がバッと顔を上げる。
リボーンは山本の言葉を聞くか聞かないかのうちにそれをガサリとあけた。
脅迫文らしき物と、小さな薄い紙袋が出てくる。
獄寺はリボーンからそれを受け取って読み上げる。

「ボンゴレファミリーに告ぐ・・・・・お前らが大事にしている少年を預かっている・・・十代目のことですね」
「たぶんな。続きを」
「はい・・・人質を無傷で返して欲しいなら、お前らが奪った高村組のシマから手を引くことを約束しろ」
「高村組?シマ?何のことだよ、おい」

ヤクザとのつながりをいまいち理解していない山本が声を上げるが、獄寺は答えなかった。
いや、答えられなかった。
最後の数行の文に目を奪われる。顔色がさっと青くなり、読むことをためらう。

「ど、ど・・・同封した写真は、高村組が本気だという証拠だ。もっと人質を辱めたいか?・・・・!!!!」

読み上げながら、脅迫文と一緒になっていた紙袋をかえりみる。写真を入れるには丁度いい大きさ。

「午後3時に一人高村組の屋敷まで来い。もし不穏な動きをしたら、人質は帰ってこないと思え・・・・・・・・・高村組五代目組頭」

山本は急いで紙袋を破った。
バラバラと出てきた数枚の写真。そこに映るのは・・・ボンゴレファミリー十代目、沢田綱吉その人である。
だが。

「・・・・・・・・・!」
「これは・・・!!!」
「じゅ・・・・十代目・・・・・・・・・・!!!」

写真の中のツナの顔は、顔を真っ赤にして涙を堪えていた。
獄寺がくらあっと眩暈を起こす。
それもそのはず。

ツナはセーラー服を着せられていた。

ブルーに2本の白ライン、赤いスカーフの超定番、もといコスプレ向きのもので、ツナのへそが見えそうで見えないサイズ。
さらに太ももが丸見えなくらい丈の短いスカート。
ツナが生足を隠そうとして、必死にスカートを押さえている。
山本は考え込むようにその写真を見て、獄寺は七転八倒する。リボーンは・・・動じない。

「あああああっ、こいつら十代目になんてことを!!!」
「確かに奴等は本気らしいな・・・靴下が片方脱がされてるのが何よりの証拠だ」
「どんな本気だ阿呆。それと鼻血止めろ獄寺」

ツナ不在により、リボーンの容赦のないツッコミが入る。
次の写真もその次の写真も、すべての写真が似たようなものだった。
セーラー服に始まり、メイド、レースクイーン、ミニスカポリス、ナース、巫女さん果ては趣味に走ったのか猫耳に首輪なんてのまである。
どの写真も変わらずツナは恥らっていたが、レースクイーンの辺りでヤケになったらしく、言われるがままにポーズなんかも決めていた。

「・・・畜生許せねぇ・・・俺のツナにこんな恥ずかしい思いさせやがって・・・・・・!!」
「“俺の”は抜かせ。かっこいいこと言いながら親指を立てつつ鼻血を出すな不気味すぎる」

いつもの罪のない笑顔のままのリボーンが、内心ヤクザに敬礼していた山本を扱き下ろす。
ちなみに獄寺はミニスカポリスでノックアウトされてスモモと一緒に転がっていた。

「なんにしろ、ツナは無事みたいだな」
「まあ無事っちゃー無事だけども・・・ツナのこの格好は危険だ。かわいすぎていつ襲われてもおかしくないぜ」
「確かにそうだな」
「このままコスプレがエスカレートしたら、正直俺もヤバイ(理性が)」
「ああ確かにヤバイ(お前が)」
「でもヤクザさんけっこーナイスです!こんなかわいいツナさんを見れるとは思いませんでした!!」
「分かるわそれ。連中どこでこんなちっちゃいサイズ手に入れたんだか」
「私、ツナさんはハムスターだなって思ってたんですけど猫耳でも結構いけますーvvv」
「・・・・・・・ていつの間に」

何のわだかまりもなく会話に入り込み、隣でキャッキャしていたハルに、山本はやっと気づいた。

「はいっ、ツナさんレスキューに名乗りを上げたいハルですよv」

明るく返すハル。やっと復活した獄寺が、鬼の形相で指を突きつける。

「どこの電波受信してきたんだアホ女!!!」
「ハルはツナさんがピンチだってリボーンちゃんから連絡を受けました!電波なんかじゃありません!!」

いやお前は電波だろう。思ったが口には出さないでおく。誰とはなしに。

「これで人数は揃ったな」

見上げて笑うリボーンは、何か大きなことを企んでいるようであった。

「今からツナを助けに行く。各自ちゃんと武器を持てよ」

そう言って、リボーンは玄関に向かい始めた。
獄寺がはっと今の事態を思い出し、リボーンの後ろ頭に声を投げかける。

「リボーンさん、十代目を無理矢理取り返す気なんですか!?」
「そうだぞ」
「・・・十代目は人質にされているんですよ!!?」
「ツナを助け出したいとは思わないか?」
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・!!」

獄寺がぐっと言葉を詰まらせる。
リボーンが振り向いて、ニッと、笑った。

「安心しな獄寺。お前のダイナマイトに、ジャポーネのヤクザは逆立ちしたって敵わねーよ」
「リボーンさん・・・・・・・!!」
「それに・・・」

リボーンはまた前を向く。
感動している獄寺に、止めとばかりに言葉をやった。

「連中が嫌がるツナを無理矢理脱がせて裸にした上恥ずかしい衣装を着せたことを考えると、な」
「うるぁああ許せねえ一人残らず木っ端微塵に爆砕したるわ!!!!早く来い山本とアホ女グズグズすんな!!!いざや十代目の元へ!!!!」
「うん、お前結局そーなのな」
「アホ女じゃなくてハルですよう!」

獄寺の導火線に火がついた。
なにやら言っている二人には一瞥もくれずクイックダッシュで家を出る。
それを見送って、山本は初めて、笑った。
ただ笑うといっても見る人が底冷えするような、禍々しい笑顔なのだが。

「確かに、ツナにそんなことしたヤツ等は生かしておけねーな。俺も本気でイクぜ」
「ハルもっ!!ちゃんと武器持ってきたんですよっ!!!」

やる気満々の3人。
3時少し前の、出来事だった。


 

 

 

 

 

続き

 

 

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