昼時の百貨店。一番客が入る時間帯。
ボンゴレファミリー次期ボスとその親衛隊はエレベーターに乗り込んだ。
人が多いためエレベーター内も、重量オーバーを起こすのではないかと思うほどたくさんの人ですし詰
め状態である。
もちろんトロトロしていると、

「わっ!わっ・・・ああああああああああ」

ツナのように人並みにのまれてあらぬ方向へ流されてしまったり。

「十代目っ!」
「ツナ!」

同時に腕を伸ばした獄寺と山本に、シャツをがっしり掴まれる。
人ごみからずるずる救出されたツナ。
髪がかき回されたようにグシャグシャ、シャツも熱気で汗ばんでいた。

「助かったあ・・・ありがと、二人とも」

涙目の上目遣いでそんなこと言われて、黙っていられる二人ではなく。


おい山本十代目にくっついてんなそこでちょっと仁王立ちして十代目を人ごみから守れぶっちゃけ邪魔だ


お前がやれ獄寺俺はツナが変態にに触られねーように守ってなきゃいけねえぶっちゃけお前のことだけど


バチィ!!!!


獄寺と山本、一瞬のアイコンタクト(?)、むしろ火花が散る。
声に出さずともお互い言わんとしていることは分かる。
つまるところ、互いが邪魔なわけで。
しかしながらツナに注意されるから声には出せず。

「ん・・・・ねぇ二人とも・・・・もうちょっと離れても大丈夫だって・・・・・・・・・・」
「いえ、十代目をお守りするのが俺の役目ですから」
「危ねーから盾になっててやるよ」

ツナを挟み込むように密着した二人は一向に体を離そうとしない。

「や・・・・・・・狭いよぉ・・・・・・・・・」

感じられる体温に真っ赤になって、ツナはか細く呟いた。











 




正しい犬のしつけ方2










 





ツナの一言で二人が慌てて離れた数秒後に、エレベーターが停止する。
エレベーターを降りると、クーラーの冷気と新鮮な酸素が出迎えてくれた。

「ぷはあーーーー!やっとついた・・・」

ツナは安堵したような表情で歩き始めた。

「危なかったですねっ、十代目」
「とか言いながら密かにガッツポーズとってるお前のほうがいっそ危ないよな」
「るせぇ野球野朗・・・・・・・・ああ十代目の腰が俺の手に・・・v」
「俺は太股だったぜ」
「・・・ここぞとばかりにセクハラしやがって」

後ろでなにやら言っている二人はとりあえず無視することにする。
目的地は一階フロアの一角。
とはいっても「ツナが行きたい所」なので、どこに行くかは本人にしか分からない。
ツナの体の余韻をほんわほんわしながら味わっている獄寺も、ただ主人の一歩後をついてゆくだけであ
る。
スニーカーをぺたぺたさせているツナに、山本が訊いた。

「で?行きたいトコってどこだ?」
「えーっと、もうちょっとで・・・・・・・あ、あった!」

足を止める。
二人も立ち止まった。


 

 

 


そこのディスプレイは周辺より一際人ごみを呼んでいる。
時々聞こえてくる鳴き声。
ずらりと並んだ乾燥食品。
どんな機会に使うものなのか、縦横30センチくらいのお洋服。

ペットショップだった。

「へぇ、ここか」
「うんっ、母さんとじゃあんまり見れないから」

山本が、ガラス張りの子犬のゲージへまっすぐ向かっていったツナに、
やっぱかわいいな、と笑みを浮かべる。
ツナが額を引っ付けているのは子供のダックスフンドがいるガラス。
丁度、おもちゃを夢中になって追いかけ回しているところだ。

「わー、かわいい〜〜〜〜〜〜っ」
「そうですねv」

短めの体毛に包まれた足がちょこちょこと動いている。
その足もこれまた小さく、それに蹴られておもちゃが跳ねると、ぴくんと反応してまた追いかける。
丸っこい胴がころんと転がって、黒く塗れた目で、人間の方を見た。
柔らかそうなその体を抱き上げられないのが残念だ。

「かわいいな〜」
「かわいいですねぇ」

獄寺が相槌を打つか打たないかのところで、既にツナは隣のチワワのゲージの前に移動していた。

「すごいちっちゃい、手の平に乗りそうだよ」
「小さいものって何だか言いようのない魅力を感じますよね・・・v」

「そうだねー。あ、ホラ獄寺君、ポメラニアン!こういうのもいいなあ」
「ええ、触り心地のよさそうな立った毛並みがなんとも・・・vv」

「かわいい、触りたいな」
「俺もぜひ・・・vvv」

いつになくはしゃぐツナに、かなり感情移入した様子で獄寺が言った。
何となく会話が成立しているようには見える。が。
獄寺は犬の方は見向きもせず、ずーっと愛するボスの微笑んだ顔を、はたから見たら不気味なくらい凝
視していた。
うっとりした表情。返す返事も犬のことに聞こえてその実違ったりする。
犬を夢中になって目で追っているツナは気づいていない。

そんな二人を見て、棚に並べられたペット関連書籍を読み流すようにしながら、

(獄寺、また妙な妄想繰り広げてやがるな)

山本は眉をひそめていた。

 

 

 


それにしても、ツナの『行きたい所』がペットショップだったとは。
よちよち歩く子犬を食い入るように見ているツナに、獄寺は思わず零した。

「犬欲しいんですか?十代目」
「ううん、そうじゃないんだけど」

ツナが、大真面目に聞いてきた獄寺に笑い返す。

「小さい頃は欲しかったよ。俺一人っ子だったから、母さんが出かけたりすると寂しくて。世話できないから諦めたけど」

浮かべた笑みは、自嘲でもなんでもなく、ただ懐かしむようなものであった。

「こんな犬がいいあんな犬が飼いたいって夢みたいに思ってたんだ。だから犬は好き」
「十代目・・・・今はもう、欲しくないんですか」
「うん。やっぱ世話できないだろうし。それに・・・・・・・・」

照れたように、困ったように、優しく笑う。

「今は別に、寂しくないからね」
「・・・・・十代目・・・」

獄寺が瞳を感動に震わせた。
そしてツナがはっとして、リ、リボーンとかランボとか色々いるから・・・などと言い訳めいたことを
控えめに言う。
そうだとしても、獄寺には十分すぎる一言だった。
ツナの前髪に額が触れるか触れないかの位置まで顔を近づけ、囁く。

「俺、十代目に・・・」

ぐいー

「なー、ツナはしつけのなってない犬ってどうよ?」
「え?ええ!?」

構わず思いっきりツナの腕を引いたのは山本だった。
あまりに強く引きすぎて、ツナの小さな体が傾いて、それを山本が受け止める体勢になる。

「犬はいいけどよー、やっぱ飼い主のいうこと、ちゃんと聞くようじゃなきゃな」
「わっ!?何のことだよ山本?」

ツナが驚いて山本を見上げる。
ブチッとかいう音をさせた獄寺が、怒りに震えながら言葉を吐き出す。

「て・め・え・は・な・ん・ど・じゃ・ま・す・れ・ば・き・が・す・む・・・・・・・・・・!!」
「でさーツナここのページに書いてあるんだけどよ」
「聞けぇぇぇ!!俺が十代目と愛を深めている瞬間ほぼ9割以上の確率で横槍ブッ刺しやがってどんな鉄壁守備だこのサムシングエロス・・・・って
あ・・・・」

やっと気づく。顔を真っ赤にして、彼を睨みつけるツナの視線に。
周囲の人々の視線は獄寺,およびツナに集っていた。
獄寺の声は急速に勢いを失い、心なしか髪の跳ねがへにゃっと下がったようであった。

「獄寺君・・・・・・山本とけんかしないって言ったよね・・・?」
「・・・・・・・・あの、その、十代目・・・・・」
「・・・・・・約束守るって言ったよね?」
「・・・はい、すみませんでした」

獄寺が申し訳なさそうに小さくなって謝る。
一方獄寺とは正反対の山本は上機嫌に言った。

「そうそう、えらいのなツナ。」
「えらいって何が?」

きょとんとして聞く。獄寺はその態度の差に軽くショックを受けているが、山本は気にせず続ける。

「ほら、コレ」

 

山本は手に持っていた本・・・・・・「犬のしつけ・基本編」とかいうタイトルのもの・・・・・をツナに広げて見せた。



 

 

 

 

 

 

続く

 

 

 

|||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||

またやっちゃった忠犬獄寺シリーズ。
すいませんでしたあああああ!!何コレ!何なのコレ!!!
テンション変です。ギャグじゃないかもしれません・・・・
あんまり犬っぽくないです。でも忠犬だと言い張ります(何故)。
ていうかツナが犬好きとか全部捏造です。
いや、だって綱吉ですよ?徳川家五代将軍ですよ?生類憐れみの(以下略)
ここまで読んでくださって本当ありがとうございましたーーー!!
何かまだ続きます。




続き製作中・・・

 

テキスト目次に戻る