午前中の、クーラーの効いた部屋なのに、俺は何でこんなに汗かいてんだ?

ツナは自問自答した。せずにはいられなかった。たとえ答えが一つで、それが分かりきった、聞くまでも無いことだとしても。

「なめんな!!!俺は十代目に人生捧げてんだよ!!そんじゃそこらのヤツとは覚悟が違う!!!」
「はッ、覚悟だったら俺だって負けてないね」
「何をこんにゃろ、ゴッコ遊びだと思ってるヤツが勝てると思ってんのかぁ!!!?」

つまるところ獄寺と山本が、テーブルに座るツナを真ん中にしていつものように戦争を展開しているせいである。

「いい加減にしろ二人ともーーーーーーーーーー!!!!!」

叫んでみると一瞬同時に声を止めるが、すぐにまた無意味な紛争は開始される。

「あらら、怒られちまった」
「てめぇが騒ぐからだこの平成のエロ魔道師!」
「ストーキンボム隼人に言われたかねぇな」
「何で俺の二つ名知ってんだゴルァ!!?」
「ていうかどっちも黙っててくれ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」

ツナはこの状況に疲れ、机に突っ伏しながら力ない声で呟く。
そしてもう一つ自問自答した。

どうしてこんなことになったんだっけ・・・・・・・・・・・・・・・?








嗚呼、夏休みの友








ツナん家に遊びにいっていいか?と最初に言い出した山本が原因かもれない。
遊んだり涼んだり、何となく宿題もやろうということで。
終業式の日に約束をしたのだ。

「夏休みの友」という、学生を完全に甘く見たタイトルの問題集をパラパラとめくる、
「何が友なんだか」と笑う山本。
「そうだね」と、ツナも言って笑う。

友達を家に招いた経験があまりないツナは嬉しくて仕方がなかった。もちろん二つ返事で山本の訪問を受け入れたのである。
友達との約束。これも、何だか初めてのような気さえした。
が、黙っちゃいないのがこの男。

「俺も御一緒します、十代目!!!」

いや君、そうでなくても休日絶対遊びに来るでしょ、というツナの一言は彼に届くまでもなく。
もう既に山本と花火を散らしていた。これが原因かも。
刻まれる眉間の皺。
何で普通に張り合ってんの山本。
二人同時に振り向けば、胃が痛くなりそうなツナ。

「十代目、暑苦しいし場所とるだけだし十代目の御身も危険なのでこのエロティカルベースボールプレイヤーは撤去という方向でよろしいですか」
「よろしくないって約束したんだから」
「ツナ、このハチ公面した生物裏にドス黒い欲望持ってるみてーでツナの貞操危ないからっつーかぶっちゃけ邪魔だしやっぱり俺の部屋来ねぇ?」
「そういうこと言うからエロいって言われるんだと思う」

嗚呼そうだ。原因は。

「もう、皆で俺の部屋に来ればいいじゃないか」

二人に、だったら来るなと言わなかった、俺自身にあるんだ。







そういうわけで、いつものように喧嘩に発展しているわけで。
締め切った部屋の中、獄寺と山本がゆっくり立ち上がる。
どちらもまとう黒いオーラ。背景に竜虎の戦いが現れた(ような気がした)。

「丁度良い、この際どっちが十代目に相応しいか決めようじゃねえか」
「いいぜ、獄寺。負けたら潔く手を引くってことだな」
「いや何勝手に決めてんだよ外でやってよせめて」

ツナが控え目にツッコミなど入れるが、悪鬼と化した二人の耳には入らない。
緊迫した空気。張り詰めるツナの部屋。
何か一つでも音が鳴ろうものなら、それは決戦の合図となる。

「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」
「・・・・え、マジなの?マジで人の部屋で一悶着起こそうとしてるのあんたら?」

ツナが迷惑がましい視線を向けて後じさるのさえも聞こえていないらしい。
緊張の一瞬。
永遠に思える一瞬。

「ガハハハハハハハハおれっちボヴィーノファミリーの」
「果てろ」
「どりゃ!!」
ドガガガバキャゴッ!!!!!!
「ランボだきゃぱああああああ!!!??」
「ラーーーーンーーーーーーボーーーーーーーー!!!!?」

仔牛の笑い声がゴングとなり、対立する二名のど真ん中に現れたランボは、哀れ初撃の挟み撃ちにあった。
人間業とは思えない効果音つきで吹っ飛ばされたランボ。
心配して叫ぶツナを尻目に、戦況は緩まない。

「死にやがれ!!!」

ガッガッバシバシバシッ!!!!

「へっ、効かねぇな」

ドカッズダダンガバッドゴォッ!!!!!!

「が・ま・ん・・・・・・・・・・・うわああああああああああああああ!!!!」

ドタドタドタドタドタドタドタドタドタドタバタンドタンドカーン!!
激しい拳や蹴りの押収。服を掴んでは技をかけ、腕を掴んでは投げ飛ばす。
ついでにランボが泣きながら駆け回っている。
今まで聞いたことも無いような音が部屋中から聞こえてくる。ああ、獄寺君に山本、プロレス界に入ったら絶対即戦力だよ。
・・・・・・・何だかもうすべてを忘れて眠りにつきたいツナであったが、生憎山本のきれいな一本背負いで獄寺が吹っ飛ばされ、
しかもその方向がツナのベッドで、それに気付いた獄寺が何か鼻血出しちゃってるので駄目っぽい。

「くそおおおおお十代目はわたさねぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!!!!!」
「俺だってツナは譲れねぇ!!!!!!」
「とか言いつつどっちも迷惑だーーー!!!!」

ツナは叫び、部屋の隅に回避しつつ、今ここで生き残る術を考える。
机の下に隠れる・・・・・たぶん無理だ。今山本が飛び道具を調達している。

ベッドの下に隠れる・・・・・血まみれなのを考えなければいい案かもしれないが、あと三分もしたらベッドが宙を舞うだろう。却下だ。

ドアから逃げる・・・・・ドアの前でランボがバズーカ構えてやがる。駄目だこの野郎。

窓から逃げる・・・・・・・・・・・・・・・
いいかもしれない。というか、それ以外考えられない。降りる時多少の怪我をするかもしれないが命には代えられない。危機が迫っているのだ。
ツナは姿勢を低くして走っていき、窓の鍵を外した。
そういえばクーラーかけっぱなしだよという考えが頭をよぎったが、それどころではない。

「早く逃げなきゃ・・・・・!!!」

勢い良く窓を開ける。
そして、飛び込んできたものに押しつぶされた。

「ツナさーーーーん!!会いにきちゃいました!!!」
「あああああああああああもお次から次へとぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!!!!!!!」

窓からの刺客は三浦ハル。
ハルに抱きつかれたという事実と更に悪化した事態にツナの顔が真っ赤になる。
思いっ切り不法侵入した女子中生は、一通りツナに頬ずりするとうっとりして言った。

「ああ〜〜っ、ツナさん柔らかいですvふにふに〜〜〜vV」
「離せよーーー!!離さないとたぶん後ろの二人が過剰反応起こして・・・・・・」
「十代目に触んなアホ女ーーーーーー!!!」
「やっぱし来たーーーーー!!!!!」

フィーバーしている獄寺と、オーラが更に黒くなっている山本が殺到する。
ツナは必死にハルの腕を振りほどいて横に飛んだ。

「はひーーーーーーーーーーーーーっ!!!?」

ドタバタドカーーーーン!!!

ハルもまた攻撃を避けつつ応戦を始める。

「何ツナに触ってんだ?あ?」
「帰れアホ女!!お呼びじゃねえんだよ!!!」
「何なんですかあんたたち!!ツナさん怖がってるじゃないですか!!!」
「あんたも怖えーよ!!!」

もはや義務感すら感じつつ叫ぶ。
こうなったらドアを強行突破するしかない。やけくそになって走る。
ところが、ツナはまたも何かに抱きつかれた。

「!!!?」

暗くなった視界に嫌な予感を覚え、見たくもないが頭上を見上げてみる。

「やあ、若きボンゴレ十代目。十年前も愛しい人」
「余計ややこしくなるからお前は出てくるなーーーーーーーーー!!!」

案の定。いつの間にか入れ替わった十五歳の伊達牛男がそこにはいた。

「やれやれ、つれないねアモーレ。五分しか会えないのに」
「今すぐ帰って欲しいんだけどなこの状況!!!」
「そんなこと言うなよ。ほら」
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・あ・・・・・・・・・・・」

あごにランボの手がやられる。目で追うまでもなかった。ツナの唇に、ランボのそれが重ねられる。
直前。

「ツナさんから離れてくださーーーーーい!!」
「ツナに何やってやがる!!!」
「果てろ」
「がッ!!!!?」

ツナの後ろで不毛な争いを続けていた三人の矛先は、一気に大人ランボに向かっていた。
着火前のダイナマイトと野球ボール(硬球)と鎧兜がダーツさながらランボに次々命中する。

「が・・・・ま・・・・ん・・・・・・・・」
「ラ、ランボ!!?」

卒倒しそうなところ踏みとどまったのは褒めてやるべきだったかもしれない。
だがツナにはそんな余裕はなかった。
一番に彼の元にたどり着いた山本に、肩を掴まれすごまれる。

「大丈夫かツナ!!唇触れてねぇよな!!?俺とする前に!!!」
「ていうか山本お前この場でする気だろ!!?」

いろんな意味での危機を感じ叫んだ直後、ハルにグイッと引っ張られる。

「ツナさん、駄目ですよこんな暴徒にキューティーリップを捧げるなんて!!!」
「捧げねーよ!!!!益々何言ってんだあんた!!!」

寒気のようなものを感じたと思ったら、今度は獄寺の腕の中にいた。

「十代目!!俺のすべてはあなたのもので、あなたのすべては俺のものです!!!!」
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・あー・・・・・・・・・ねぇ、泣いていい?」

何か人生においてとてつもなく大きなものを諦めた気分でツナは言った。


右肩に手を乗せる山本。
左腕を離さないハル。
正面から見つめる獄寺。
背後から泣きついてる大人ランボ。
いよいよ、本格的な戦争が開始されるだろう。五つ巴・・・か。ツナが力なく笑ったのに、誰も気付かない。

「ツナはゆずらねぇ!」
「うう・・・・ボンゴレ十代目は渡さねぇ・・・!!」
「ハルはツナさんが欲しいです!!!」
「十代目は俺のモンだ!!!!」


誰でもいい、助けてくれ!!


「ちゃおっス」

聞こえた声に、緊迫した空気がぴたりと止んだ。
ドアの所に立っているのはリボーンである。

「盛り上がってる所、悪いな」
「リボーン!!これどーにかしてくれーーーーーーー!!!」

必死に叫ぶ。もうこれしかすがるものはない。
叫んだツナを各人が自分のもとに引き寄せようとする。

「お前ら何か勘違いしてないか」

見上げて、冷酷な言葉。いいぞリボーン!ツナは心の中で、今までにないほど、リボーンの存在に感謝した。
リボーンが一刀両断する。


 

 

 

 












「ツナは俺のものだぞ」



「お前もかあああああああああああああああああああああああああああ!!!!!!!!!!」









 



 




ツナは叫んだ。それはもう、涙が出るほど叫んだ。






 

 

 

 

 

 

 


キッチンに母がいなかったのは幸いだ。
二階と同じくクーラーの効いた居間。キッチンの方から毒々しい煙が上がっている。

「ねぇ、お昼はざるそばにしようと思うんだけど、いいかしら?」
「・・・・・・・・・・・・・・・いいんじゃない?」
「きざみ海苔が見つからないからセミの羽で代用するわね」
「・・・・・・・・・・・・・・・どうぞ・・・・・・・」

どこか上機嫌なビアンキの声に、うつろな声色で対応する。
むしろ対応し切れていない感が高かったが。
それに向こうも気付いたのか、ビアンキが振り向いてツナを覗き込む。

「今日は何も言ってこないのね、珍しい。元気無さそうよ」
「いや、うん・・・・・・・何かさ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」

相変わらず止まない二階の騒音。
自分の部屋がどんなことになっているか。考えたくもない。
一つ、ため息をついた。

「ビアンキといると一番落ち着くのが我ながら悲しいなあって思ってね・・・・・・・・・・」
「良く分からないけど、私はリボーンといる時が一番落ち着くわ」
「そうですか・・・・・・・・・」

どうでも良い類の返事に、またも力なく返す。

 






嗚呼、そういえば宿題、一ページもやってなかった。



 

 

 














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何でこんなに長いんだろう。
そんでもって何でこんなにアホなんだろう。
今まで耐えながらも読んでくれた方々、ありがとうございました。
下らない物ですいませんと百七十回くらい言っても言い足りない。
前書いたアホギャグを上回るアホさ。ツナ総受けなのに、なんか愛されてる感があんまありませんネ☆←オイ
ランボはじめて書きましたよ。あんまりしゃべってないですけど。
ごめんなさいごめんなさいごめんなさいいいいいい
割と失敗したけどもったいないのでさらしとこう。

 

 

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