ゆうに800ページは下らない本を嬉々として選ぶ、自分の上司。
書斎のほこりっぽい空気に眉をしかめながらも、ゼンウはそんなタタリを見て
ひっそりと微笑んだ。
何かちょっと、たよりねぇんだよなぁ。
ま、そこがかわいいんだけど。
悪戯
ゼンウはタタリの護衛の仕事中である。
まあ護衛といっても敵が現れた時に備えて待機しているだけなのだから、ほぼ付き人という状態なのだが。
今日も書斎で本を見るというタタリについて行って、行ったところでやることもないので、
本棚の間を所在無さ気にブラブラしていた。
「この城にこんな大きな書斎があるとはな」
初めて書斎に入った時にも思ったことだが、改めて感想を口にする。
立ち並ぶ本棚に、詰められた分厚い書籍たち。
本を選び終えたらしいタタリが、備え付けられた大きな机につきながら言った。
「確かに。あの馬鹿からは考えられん」
馬鹿と呼んだのはこの国の国王であろう。
召抱えられている立場だというのに口も減らないタタリに、ゼンウは苦笑した。
「相変わらずでかい態度だな」
「作戦指揮を取るものはそういうモンだ」
真偽の程は定かではないが・・・・・・・・・・・・・・・・
彼が言うならそうなのだろう。ゼンウは信じることにした。
この、別段強くも無い国を、この少年は強くしようともくろんでいるらしい。
理由はたぶん、自らの作戦を試したいだけだろうとゼンウは思っている。
剣を扱うことに長けたゼンウには到底理解できない内容の本を眺めて、一言。
「また兵法書読んでんのか?」
「いや」
机に座って、顔も上げずに否定の声が飛ぶ。
「政治の本だ」
「へぇ・・・珍しい」
「長い目で見るとこういう知識も必要になる」
「勉強家だな」
褒めてやったつもりだが、タタリは特に反応もせず本と自分の世界に入っていってしまった。
ゼンウも、特に付け足すことも無いので無言になる。
一冊、本棚から本を取り出してみる。
その本は彼が今まで持ったことも無いほど重たい。当たり前だ。ページが多いのだ。
タタリが一度コレを読んでいるのを見たことがある。
だから自然にゼンウの手に入ってきた。
コレが兵法書か・・・・と胸中呟き、ぱらぱらとページをめくる。
これまた今まで見たことも無いほど細かい文字。
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」
びっくりするほど分からない。
異世界からやってきた少年は、この程度とすいすい頭に入れている。
ゼンウはため息をついた。
「あんた、すげぇよ。こんなわけ分からんもん使って戦いに勝っちまうんだから」
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」
タタリは言葉を返さない。構わず続ける。
「俺はあんたを守ってるつもりだったが、逆に守られてもいたみてーだな」
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」
「今更だけどよ。感謝してるぜ」
タタリはゼンウの方に顔も向けず、黙って分厚い本を読んでいる。
いや、読むふりをしているのだろう。
この少年が他人からの謝辞に慣れていないことはゼンウも知っていた。
彼と出会うきっかけとなった戦いでの、民衆との接し方を見ると歴然である。
照れてんのか?
ゼンウは手にしていた兵法書を本棚に戻すと、壁に並ぶ本棚と机に座る彼の上司の間に立ってみた。
大きな机とはアンバランスすぎるタタリの小さな背中。
その、向うを向いているせいで少ししか見えない頬が
微妙に朱をさしている。
黙ったまま本を読んでいる素振りを見せる彼にに気づかれないよう、声に出さずに笑う。
ホント、かわいいやつだぜ。
もし振り向いたら顔は真っ赤なんだろう。絶対。
そんな顔が見たくて、ひょい、と
ゼンウはタタリの頭から学生帽を取り上げた。
「なっ・・・・・・テメェ」
反射的に、体ごと振り向く。
いつも目深に帽子をかぶっているせいで、めったに見られない髪を下ろした姿。
さらに赤面しつつ睨み上げる表情が思いのほか子供らしく、
何だか微笑ましい気分になるゼンウである。
「顔赤いぞ、大将」
「赤けりゃ悪いか。返せ」
不機嫌な声とともに伸ばされた手をぱっと避ける。
「やだ」
「・・・」
ゼンウが手にする帽子を追って、タタリも更に手をやる。
だが高い位置に持っていかれると、座ったままでは届かない。ゼンウが立っているからだ。
ガタン!
タタリも立ち上がって帽子を奪おうとするが、ゼンウは一つ笑ってまたも高い位置に帽子を逃がす。
ついに帽子はゼンウの頭より上へ。
当然、身長差のあるタタリは両手を伸ばして背伸びをしても届くはずも無く。
「この野朗・・・・・・・・」
忌々しげにつぶやくタタリに、ゼンウがぷっと吹き出した。
「ククク・・・・・すげー子供みてぇ。かわいい」
「黙れ」
「あんた、寝る間も惜しんで本ばっか読んでるからこんなちっこいんだろ?恨むんなら自分恨めよ」
「知るか、黙れ、返せ、命令だぞ」
「そーやってムキになるからかわいいんだって。そこがいいんだけどな」
牙をむいているタタリの険を含んだ言葉をへらへら笑ってかわし、奪った帽子をかぶってみせるゼンウ。
似合うか?などと聞いてくる彼に、タタリは冷ややかにキレた。
「てめぇは命令違反で処罰する」
同時に、机の上に垂れ下がっている太い紐を力一杯引く。
仕掛けの作りは至極単純だ。
その紐は天井の梁を経由して机の真後ろに立つ本棚に繋がっている。紐を引くと本棚は前方・・・つまり
ゼンウの背中に向かって倒れこんでくる。
「あ?おわーーーーーーー!!!!?」
ドドドドドドドドドズドン!!!!!!!!
傾いて落ちてきた本に攻撃されたゼンウは体勢を立て直す暇も無く、とどめの本棚直撃であえなく床に沈んだ。
タタリは、床にへばりついて腰から下を大量の書籍に埋もれさせたゼンウの、取り落とした帽子を拾い上げて
慣れた手つきで深くかぶる。
満足したように、凶悪な笑みを浮かべた。
「自分の立場が分かったか?」
「痛いほど分かったぜ・・・・・・・・・・お前の愛情表現は痛恨っていうかこれ結構死ぬぞ」
「死ね」
「容赦ねー・・・いつの間にこんな罠を・・・・ってちょっと待て俺このままでどこ行くつもりだ」
「阿呆はそこでくたばってろ。俺は休憩してくる」
うめいているゼンウに見向きもせず、タタリは部屋を出ようと歩き出した。
立ち去ろうとする彼を見上げて、ゼンウが聞こえよがしにつぶやく。
「コラ大将、護衛もつけないでうろうろするんじゃねーよ」
「自分の身くらい自分で守れる」
ポケットにはメリケンサック。
それはゼンウも知っていた。だが問題はそこじゃない。動かせない体はそのままに、ゼンウが告げる。
「・・・・・・・・俺が、あんたの近くで守りたいんだ」
本に埋もれた状態で言っても雰囲気は出ないけどな、とは思ったが、
本当に望むことなので嘘は無い。
その心が伝わったのか、タタリが踵を返してゼンウに近寄ってくる。
「散々扱き下ろしても結局は戻ってきてくれるのか・・・・・・・そんなあんたが」
「もう一棚くらっとけ」
「ぎゃーーーーーーー!!!!!!!?」
ドザザザザザザザザザズガン!!!!!!!!
今度はタタリの手で本棚が傾けられ、何か言いかけたゼンウの上半身までもが(というか全身が)本に埋まる。
やはり仕舞いに本棚の打撃が炸裂して、悲鳴が途絶えた。
タタリは手をぱっぱっと払って、今度こそ書斎を出る。
「俺が戻るまでに元通り直しとけよ」
「鬼・・・・・」
山積みの本の塊から、ゼンウが懲りずにツッコミを入れる声が聞こえた。
「あ、師団長殿。お茶をお持ちしたのですが」
「書斎に置いとけ。後で飲む」
短く言うとスタスタ行ってしまったタタリに、
「はあ」
多少疑問符を浮かべながら、兵士は返事を返した。
出来るだけ早足にしようと大股で歩く姿が、小さな体に妙にミスマッチで、
つい目で追ってしまう。
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」
手元のお茶と書斎の扉を見比べる。
・・・・・・・・・・・・・こんな一介の兵士が足を踏み入れても良いのだろうか・・・・・・・・
それ以前にお茶をいれること自体兵士の仕事ではないのだが、彼が自発的にやったことなので、
まあ、いいのだろう。
兵士は結論付けると、書斎に入ろうとした。
だが何となく気になって、もう一度幼い師団長を振り返ってみる。
「・・・・・・師団長殿・・・・・・?」
タタリが、耳までも真っ赤にしてたのは、
たぶん見間違いではない。
終
|||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||
すべてがおかしい。
初のキングクリムゾン・ゼンウ×タタリ小説でした。
ごめんなさい。ごめんなさい!!ごめんなさいいい!!!!
キャラを結局つかめてません・・・・・・資料ゼロで気合で勝負してボロ負けでした(何に)。
ゼンウ・・・・・・・・こんなアホじゃなかった・・・・・・・・・・・・・・・・・・
ぜ・ん・ぶ!!捏造デス☆
ゼンウはタタリをかわいがってるといいなあって!タタリは照れ屋さんだといいなあって!
名も知らない兵士に懐かれてるといいなってーーーーーー!!
某キンクリサイトさんでのエチャログを勝手に参考に(すみません)愛だけで挑戦。
腹切らなきゃ。
ここまで読んでくれた方!!ありがとうございました!!!!
資料なしで書いたブツなので
ここがおかしいYO !とかこのキャラはこんな感じだYO!!
とか
色々拍手かなんかで突っ込んで頂ければ修正いたしますので・・・・・・
テキスト目次に戻る