強引な男達

 

 

放課後の1−Aの教室。
そこにいるのはツナと、もう一人。


俺の回りって何でこう強引な人が多いんだろうか。


最近ツナはそう思わずにいられない。
その代表というのが、彼の眼前で目といわず拳といわず燃え滾らせているこの男。

「沢田、今日こそはボクシング部に来てくれるか!!!?」

笹川了平。
別にピンチでもないのに常に死ぬ気、人呼んで極限男。
彼に会った人々は口々にこう証言する。
とにかく熱い。
誰も由来を知らないこめかみの傷の近くに意味もなく血管を浮かべるボクシング部主将。
体感温度が2℃ほど上昇したような気がして、ツナは力ない笑みを浮かべるしかなかった。
今が秋でよかった。
この人に出会ったのが始業式の日で本当良かった。
返事を待つ了平をよそに、ツナは力強くそう思う。
夏休みにこうして迫られていたら、例え太陽に当たっていなくても日射病で倒れていただろう。熱さで。

「・・・・・すみません、今日はちょっと・・・」
「今日はちょっとというセリフを8回ほど連続で聞いたので『今日こそは』と言ったのだが」

ツナは更に思った。


この人がもっと単純だったらどんなに良かっただろう・・・・・


ボクシングに関することのみ、了平は異様なまでの執着を見せる。
強引な上に、しつこい。この忍耐力(?)が強さの秘密なのかというくらいに。

「・・・・・・風邪ひいてて・・・・」
「昨日と一昨日と4日前と6日前も言っていたな」
「・・・・・・・・・更にお腹も痛くて」
「3日前と5日前の腹痛の原因はなんだったのだ?」
「・・・・・・・・・・・・たった今酷い頭痛が・・・」
「お前が毎日そう言うので今日は頭痛薬を用意したぞ」

警察手帳みたいにかっこよくバファ○ンを掲げた笹川兄に、今度こそツナは脱力する。

「頭痛に耐えてまでボクシングしろって言うんですか!?」
「頭痛が何だ!!!殴られた方が痛いからどうってことない!!!!」
「どっちにしろ痛いんじゃないですか!!!」

思わず叫んだツナだが、笹川了平はこれっぽっちも聞いちゃいない。
ツナの手を痛いほど握ると反対の手で空なぞ指してみせた。

「その痛みに耐えることこそ真の男の証だ!!!」
「真の男がもれなくマゾみたいでスゲー嫌だ!!ていうか手離してくださいよぅ!!」
「離さん。今日こそお前を我が部に迎え入れる事にした!!」
「したってアンタ!!や、だから俺弱いんだから無理ですって!」
「いつも1000パーセントの力が出ないのなら俺が鍛えてやる!!」
「なんて多大な有難迷惑!!?」

誰もいない教室に声はうるさいくらいに反響し、虚空に消える。
半泣きで首をふるふるしているツナを、その手をしっかりと離さないまま、了平は教室のドアに向かった。
鍛えられた体はツナの体をズルズル引きずる。
いよいよもって生命の危機が訪れたと焦るツナ。

「ダメです嫌です無理です本当に!!俺なんかが行ったら逆に邪魔になって迷惑ですよ!」

了平の足が止まった。
向き直って真正面から射るようにツナを見下ろす。
その了平の表情が、なんというか、いつもより真剣な・・・彼はいつでも真剣であるが・・・もので、ツナの目が見開かれた。

「・・・・そんなことはない!俺はお前意外の男をボクシング部に入れることなど考えられん!!」
「そ・・・!!ええ!!?」
「沢田以外は要らん!お前がいればいい!!分かったか!!?」
「は、はい!!」

驚くほど間近な上大声で、何だか妙に恥ずかしい事を言われ、思わずツナは肯定の返事をしていた。
繋いだ手に再び力が込められる。

「分かったら行くぞ!!」
「そこは待ってーー!!どこまで強引なんですかお兄さんは!!!?もー誰か助けてー獄寺君ーー山本ーーーーー!!!」

頭の中にドナドナドーナーとやたら懐かしいメロディが流れてくる。
ツナは無我夢中で部下の名を呼んだ。
もう何でも良かった。
目の前の極限男を止めるために、しいては自分のボクシング部入部阻止のために誰に頼ろうとも。
ただしリボーン名は言わなかった。彼は了平の味方だからだ。
最後の悪あがきに、教室のドアを掴んで抵抗しようとした、
瞬間であった。

「・・・くたばれぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!」

「っ!!?」


ドガァン!!!


了平が爆発した。
いや、正確に言うと、彼に投げつけられたダイナマイトが。

「おーーーー兄さーーーーーーーーーーんんんんん!!!!?」
「そのままぶっ飛び死ね、芝生メット」 

軽く6メートルはダイブした了平や突然の爆発やその衝撃にツナはただひた叫ぶ。彼はしれと言ってみせた。
ツナの周りの強引な人その2、イタリアからやってきたツナの最初の部下。

「ご無事でしたか十代目ー!!?」

獄寺隼人。
体のここそこにダイナマイトを隠し持った人間爆撃機、またの名をスモーキンボム隼人。
彼のツナへの心酔ぶりは尋常ではない。
ツナが獄寺に笑いかけようものなら心は舞い上がり、
獄寺以外の人間がツナに触れようものなら全自動で殺意が芽生え、
更にツナが助けを求めようものなら、廊下の突き当たりの壁をボンバーマンよろしく爆破ショートカットするほどの勢いで駆けつける(過去4回)。
とにかく抜群の忠誠心であった。
ツナの方はその忠誠は身に余る感がある・・・むしろ持て余すほどなのだが。

「ご、獄寺君、確か先生に呼ばれてたはずじゃ・・・・?」
「生活指導だかなんだか知らねーッスけど、十代目の御身には変えられません!!」
「・・・生活指導室って別の棟だよね・・・・俺の声なんて聞こえないよーな・・・・・・」
「どんなに遠く離れていても十代目の声は俺に届きます!」
「物理法則を軽々無視しやがったーーー!!ていうかお兄さんが爆発炎上したように見えたのは俺の気のせい!!?」
「グッジョブ・俺!!!」
「うわあやり遂げた顔!!!」

慌てるツナを前にして、ニカッと笑って拳を握る。
人間爆破しといてこれっぽっちも罪の意識を持たない(むしろ達成感すら感じている)獄寺であった。
すべてはツナのために。
これこそが獄寺の生き様である。

「あ・・・そうだ!!ヤバイよ死んだかもお兄さ・・・」
「不意打ちとはいえ俺に一撃くらわせるとは大したものだ」
「んん゛ーーーーーーーーーーーー!!!!?」

ツナが声を上げたのも無理はない。
笹川兄が、何事もなかったかのように起き上がったのだ。
心持ち表面が良い色に焦げ付いているものの、爆発してもピンピンしているとは。

この人、もしかして何しても死なないんじゃないのか・・・・?

もはや別次元の物を見るような目でツナは了平を見る。
彼は表情を見る限り、獄寺と戦う気満々であった。

「十代目に無理強いしてんじゃねーよ70年代熱血野朗が!!!」
「貴様こそ俺と沢田の邪魔をするな!!」
「十代目がてめえなんざに構うか!!ボクシング野朗はサンドバッグにでも欲情してやがれ!!!」
「おおお抑えて、獄寺君!!どうでもいいけど君イタリア育ちなのに何で70年代とか完全に把握してるの」

慌てて止めに入るが、ツナの声も聞かず二人の罵詈雑言はとまることなく展開してゆく。
とうとうキれたらしい獄寺がダイナマイトを取り出した。

「ブッ殺ス!!!」
「いいだろう、川原での戦いの決着をつけてやる!!!」
「ちょっとふーたりーともーーーー!!?ここ廊下!!俺らの教室の廊下だからあああああ!!!」

獄寺の悪い癖は、時々周囲が全く見えなくなることである。
ダイナマイトに火がつけられた。

こんな狭い所でダイナマイト使ったら・・・俺まで死ぬーーー!!

声にならない叫びがツナの口から迸った。逃げる暇なんて無い。
絶体絶命のその時、聞きなれた声が聞こえた。

「まーたツナ見えなくなりやがって」

あきれたような声と共に、廊下の向うからなぜか現れたのは、3人目の強引な男。
山本武。
顔良し体良し性格良し、一年で野球部レギュラーで人望も厚く勉強もそこそこ出来るザ・パーフェクト人間。
爽やかな笑顔が映えるクラスの人気者だ。
普段は温厚で場を円満に保つお母さんのような役割なのだが、ツナが関わってくると話が違う。
触るわ抱きつくわキスするわ、欧米式も遠く及ばぬやりたい放題のスキンシップ大魔王に変化するのである。
ツナ争奪戦になると本気なのか本性なのかややこしい一面も見せたりする。
そんな彼の登場に、ツナは喜びつつも、複雑だった。

山本なら何とかしてくれそう・・・!でも余計事がややこしくなるだろうな・・・・

そんなツナの心境も伝わらず。部活中だったのか汚れたユニフォーム姿の山本は、
ポケットから銃を取り出すと、獄寺に向けた。

・・・・・・・・・銃!!?

「や、山本ぉぉぉぉ!!?」
「!!?」
「ばっきゅーーん」

気楽な効果音を言い、引き金を引く。

ぷしゅッ!!
小ぶりな拳銃から勢いよく液体が発射され、獄寺もろとも水浸しにしてダイナマイトの火を鎮火した。
どうやら銃に見せかけた水鉄砲だったらしい。
してやったり、とばかりに悪戯っぽく山本が笑う。
ぽかんとする兄と、怒りに体を震わせる獄寺など眼中に入っていない。

「ツナ、声聞こえたから助けに来たぜv」
「・・・あ、ありがと・・・・」

びしょ濡れで怒り爆発寸前の獄寺。冷や汗ダラダラで後じさりながらツナはやっと返す。

「いやー急に助け求められたもんだからびっくりしてトス打ってたのにホームランぶちかましちまったよ」
「・・・過失にしてもすごすぎる・・・それより何、その変にかっこいい武器は」
「ん?これ、この前チビがくれてよ」
「ええ!?リボーンが?」

手でもてあそんでいた拳銃水鉄砲。
それはプラスチック製にもかかわらず、黒光りするリアルな色彩、ゴツい造り、ほとんど本物の銃にしか見えなかった。

「名づけて対爆弾魔犬用無力化兵器だ」
「ざけんな死ネーーーーーーーーーーーーーーーー!!!!!!」

やはり、獄寺はキれた。
火が消されたダイナマイトを懇親の力で山本に投げつける。
それを合図に、戦いが勃発した。

「はっ、効かねーよ」
「わーーー!!?」

超人的な反射神経で山本がダイナマイトを払いのけて距離を縮め、

「・・・全部くらいやがれ!!!」
「おおおお!!!?」

己の背中に手を回した獄寺が両手いっぱいのダイナマイトを飛礫のごとくばら撒いて、

「隙を見せたな!!極限延髄蹴り!!!」
「ボクシングじゃねぇーーーーーーーー!!!」

了平が強烈なキックを放つ。
狭い廊下は水と焦げ跡とでめちゃくちゃだ。
並盛中5大問題児のうち2人が揃っているのだ。むしろこれですんでるのはマシな方かもしれない。
だが、教師が駆けつけるのは時間の問題。
床に散らばるダイナマイト。どう言い訳したものか。
逃げようかな・・・ツナがそう思った時、またも強引な男が現れた。
山本が来た方とは反対側の廊下から、足音も立てず、静かに。
さっと血の気が引くこの感覚。耐え難い恐怖の記憶が、ツナの背中を舐めた。

「騒ぎがあるから来てみたら、また君か。最近よく会うね」
「〜〜〜〜〜〜ッぎゃーーーーーーーーーーーーーーーーーー!!!!!?」

彼は綺麗に微笑む、しかしツナの周りの強引な男の筆頭でもあった。
雲雀恭弥。
名前を出すだけでもたいていの生徒は背筋を凍らせる。
風紀委員長であり不良の頂点に立つ男。その冷酷さ、強さは寒気がするほどだ。
ツナがはじめてあった時は、顔面を一撃されて体が吹っ飛んだ。獄寺と山本も気絶させられた。
とにかく、強い。
その上、容赦がない。群れる相手には特に。

「うるさいな・・・・・・それにしても派手に荒らしたものだ」
「お、俺じゃないです!!!」

ツナは必死で首を振る。争っていた3人も、雲雀に気づいて戦いを止めた。
ツナをかばうようにして、獄寺が前に出る。

「何しにきやがった・・・・てめぇ」
「別に?風紀を乱す輩にお仕置きしようと思って、ね」
「すまんが帰ってくれ!俺たちは取り込み中だ!!」
「そういうわけにもいかないでしょ、風紀委員長として」

了平が言っても雲雀は動じなかった。むしろ楽しそうに目を細める。
山本が小声でツナに逃げろと耳打ちする。
まだツナたち4人と雲雀の間にはずいぶんと距離があったが、ツナは身がすくんで動けなかった。
逃げようと思っても足が動かないのだ。
と、了平がふーッとため息をつく。

「お前の暴挙は話に聞いている!俺達を罰したいのなら、俺を倒してからにしろ!!!」
「・・・良いのかい?本気でいくよ・・・・」
「お、お兄さん・・・・」
「かかってこい、ウグイス!!!!」

ゴッ!!!

ちなみにこれはツナと山本が壁に頭をぶつけた音だ。
獄寺が慌てて言う。

「バッカてめぇの頭ン中はプロティンでも詰まってんのか!!!?」
「ん、なんか違ったか!?」
「ツバメとかスズメとかメジロとかインコとかそんな感じだろ!!」
「更に違う!!!獄寺お前やっぱ頭のいいバカだろ!!?」
「・・・・・・手足の骨とか折っていい?」
「ギャーーーーー!!!」

いつの間にかトンファーを出してる雲雀にツナは悲鳴を上げるしかない。
了平は事の重大さが分かっていないようだったが、獄寺と山本は危機を感じ取ったらしかった。

「獄寺・・・ここはひとまず逃げよう」
「・・・・・・・・・・チッ、てめぇが水ぶっかけなけりゃ、こんなヤツ・・・」
「なぜ逃げる?カモメだかダチョウだか知らんが正々堂々と・・・」
「ヒバリだ、ヒバリ」
「オイボクシング野朗、俺が合図するから逃げろ。この距離なら4手に分かれれば・・・・・」
「逃げる必要があるか?」
「十代目のためだ」
「・・・分かった。合図が出るのだな」

了平はやっと理解したらしい。
じりじり、ヒバリから距離をとる。ヒバリはそれすらも笑って見ていた。

「君達は仲がいいね・・・秘密の相談事?殴りたくなってくるよ・・・・・・・」
「今だ、散れ!!!」

獄寺が叫んだ。と同時に走り出そうとして、

「さあ来いヤンバルクイナ!!決戦の合図だ!!!」
「「人の話を聞け!!!!」」

バゴッ!!

二人同時に叫んで了平の後頭部を叩いた。

「何やってんだ笹川兄逃げろって言ったの無視した上にまた名前間違って!!」
「俺は敵から逃げるような無様な男にはなりたくない!!!」
「てめぇの都合なんか知ったことかーーー!!とりあえず責任とって死ね!!空中爆砕しろ!!!!」
「・・・群れてるんだかそうじゃないんだかはっきりしてくれない?」

ギャーギャー騒いでいる3人に、雲雀があきれたような声を上げる。
そして気づいて、付け足した。

「それと、沢田綱吉君が逃げたみたいだけど?」
「十代目ーーーーーーーーー!!!?」
「沢田、どこに!!?」
「あーホントだ。ツナちゃんと逃げてら」



















 

 

 

 

 














ツナは走っていた。出来る限り足を早く回転させ、ひたすらに。
獄寺たちがどうなったか気にはなったが戻って確かめる勇気はない。
雲雀から逃れたい一心で走っている。
校舎を出てからもずいぶん走った。今はグラウンドも突っ切って、武道場の近くまで来ていた。

「はぁ・・・はぁ・・・はぁ・・・」

ここまでくれば大丈夫だろう。
そう思い足を止める。
武道場の裏手、水飲み場がちょこんとあるだけの場所だ。校舎からは見えない。
のどが渇いていたので、蛇口をひねる。熱い体に水はとても冷たかった。
そしてツナは不安に陥る。

いつまでここに隠れていればいいかな・・・・・・・・・・
教室に置きっぱなしだったカバン、どうしよ・・・・・・・・・・
獄寺君や山本、京子ちゃんのお兄さんはちゃんと逃げられたかな・・・・・・

考えたらきりがない。
はあーとため息をつく。

こんな時に、リボーンは何してんだよ・・・!

「何してんだ、こんなとこで」
「!!?」

声が聞こえた。だがそれは望んでいた幼い声じゃなかった。恐る恐る振り向いて、
心臓が止まるかと思った。

「も・・・・ももも持田センパイ!!?」

袴姿の見覚えのある人物に、声が上ずる。

「騒いでんじゃねーよ馬鹿」

持田センパイ。下の名前は知らない。
鋭い目の剣道部主将。武道系の主将の中では華奢な方だと言われてはいたが、体は十分に鍛えられている。
かつてツナは、彼と笹川京子をかけて戦ったことがあった。
勝てる気がしないと逃げたツナだが、リボーンに死ぬ気弾を打ち込まれ、
結果はツナの勝利。
しかもその勝ち方が髪を全部むしるというもの。持田はツナを恨んでいるに違いない。
だが、偶然か持田が避けていたのかは分からないが、その後、ツナは彼と一度も会うことはなかった。
それが今、会ってしまったのだ。
あの時より少し短いくらいに生え揃った黒髪に、心臓が早鐘を打った。

どうしよう・・・!!俺、センパイに殺されるかも!!!?

さっき雲雀に感じたものとは別種の恐怖が体を縛り付ける。
こんな場所だ。誰も助けには来ないだろう。
持田はツナに近づき、逃げられないように水のみ場にツナをくっつけさせる。
薄く笑った持田を見て、ツナは気が遠くなるようだった。

「俺の休憩場所にわざわざ来るなんて、馬鹿だな、ダメツナ」
「・・・ひっ・・・ごめんなさい・・・・!!」
「謝ってすむと思ってんのか?あ?」
「・・やだぁ・・・・・・!!!」

黒い袴が余計に凄みを増していた。
ツナは涙を堪える。怖くて仕方がなかった。
気がつくと持田の顔が身近に迫っていて、体が硬直する。

「てめぇにも、同じ目にあわせてやろうか・・・・・!?」

ぎゅっと髪を握られる。同じ目とはつまり、そういうことかと。分かった瞬間腰が抜けそうになった。
髪をむしられた持田センパイが、その後どうなったかは知らない。
だがきっと笑われたり酷い目にあったのだろう。それを自分がやった。仕返しされても、仕方ないかもしれない。
ただ痛いのが嫌だという情けない考えが頭を過ぎった。
髪を掴む持田の手に力が込められる。

「・・・・・ごめんなさいぃ・・・・・・・・・!!!」

震えがとまらなかった。

「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・つまんねぇ」
「え?」

緩められた力に、呆けた声が出る。
目に溜まった涙をそのままに見返してみると、持田はなんともいえない、拍子抜けしたような顔をしていた。

「怯えまくってガチガチ震えてるお前に勝っても、嬉しくもなんともねー」
「ええ!?」
「俺は本気のお前に勝った上で組み敷いて髪むしりてえんだ」
「・・・・・・!!?」

卑怯な手を使ってツナに勝とうとした持田とは思えぬセリフに、ツナは目を白黒させる。
なぜか少しばつが悪そうな持田。
髪をむしられてから何かあったのだろうか。ツナはそうとだけ考える。
持田が不覚にも、ツナをかわいいと思ってしまった、ということには微塵も気づいていない。

「あーでもこのまま返すのもムカつくな」
「・・・・え、えぇ・・・!!?」
「丁度いい、俺の奴隷になれ、お前。肩とか揉め」
「そーんなー!!?」
「殴られてぇのか・・・?」
「いえッ!!勘弁してください!!!」

ツナの周りに強引な男がまた増えた。
いっそ泣きたい気持ちでそのことを理解して、
ツナは5人目の強引な男に、半泣きで従うのだった。


















 







 

 

 

 

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8300HITキリリク「ツナ争奪戦ギャグ」でした!!
閨口様、リクありがとうございました!!
そしてすいません;;;いや本気でこれ争奪戦違います・・・
前半はそれっぽいんですけど調子に乗ってヒバリン出したらこんな有様に・・・!!
持田先輩出したらギャグでもなくなりました;
文才不足で申し訳ありません・・・;;切腹します。
返品可ですホントに!!

 

 

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